マーケット 2024.03.27

なぜ日本酒は海外で好まれるようになったのか?輸出増加の背景や、輸出の際の注意点について解説

近年、日本酒は海外でも人気を博しており「SAKE」と呼ばれていることをご存知でしょうか。。それを受け、日本酒の海外への輸出は増え続けており、全国約 1,700 の酒蔵が所属する日本酒造組合中央会の発表では、2022年度(1月~12月)の日本酒輸出総額が474.92億円に達し、13年連続で前年を上回る金額になりました。輸出数量も同年、35,895㎘と過去最高を記録しています。。(出典:財務省貿易統計)。なぜ、これほどまでに日本酒が海外で好まれ、多く輸出されるようになったのでしょうか。

 

本記事では、海外で日本酒が好まれるようになった理由や、日本酒の輸出増加の背景、日本酒を輸出する際の注意点について解説します。

 

海外で日本酒が好まれるようになった理由

海外で日本酒が好まれるようになった1つ目の理由として、海外で受け入れてもらえるよう輸出用の日本酒に改良したことが挙げられます。海外市場では、軽くてフルーティーな日本酒が売れる傾向がありました。そのことから、日本酒の中でも最高級品を輸出用に回すだけでなく、海外でより受け入れてもらえるよう、酵母を増やす一方で、アルコール成分を少し減らし、ワインのような味わいの日本酒を醸造。。その結果、アメリカやヨーロッパなどでも日本酒が親しまれるようになりました。

 

2つ目の理由は、マーケティング戦略にあります。2020年、日本酒造組合中央会はフランスソムリエ協会と提携し、フランスのソムリエに日本酒の啓蒙活動を行いました。芸術的な日本酒の醸造に最も敏感で、高い評価につながる存在はワインコミュニティーだと考えたからです。熱燗ではなく、冷やしてワイングラスで味わう手軽な楽しみ方や、酒器を使用した飲み方もあわせて海外にアピールした結果、、日本酒のブランド力は高まり、現在では世界の名だたるワイン・テイスティング大会の多くが日本酒部門を設置しています。また、かつて「ドン・ペリニヨン」の醸造最高責任者だったリシャール・ジョフロワ氏も日本酒を作るほど、日本酒を好んでいるようです。

 

3つ目の理由は、健康志向の高い人たちからも注目を集めていることです。。日本酒はオーガニック原料で作られているものが多く、オーガニック志向の強い外国人に好まれています。さらに、日本に比べて圧倒的にヴィーガン(動物性食品を一切口にしない完全菜食主義者)人口が高い欧米では、日本酒が「ヴィーガンのお酒」として注目されています。醸造の最終段階で清澄剤として、動物由来のゼラチンなどが使われることのあるワインと違い、原材料・製造過程全てにおいて動物性の物を用いない日本酒は、ヴィーガンの人が安心して飲めるお酒として支持されています。そのため、企画段階から輸出を意識し、ヴィーガン認証を取る酒造も増えてきています。

 

主な輸出先

日本酒がよく飲まれているのは、どんな国でしょうか。

 

国別の輸出金額を見ると、1位は中国で約141.6 億円、2位はアメリカで約109.3億円、3位は香港で、71.1億円です。この上位3カ国の合計だけで、総額の67.8%を占めています。4位以降は韓国(25.2億円)、シンガポール(23.3億円)と続いており、ほとんどの国で、2022年の輸出金額は過去最高を記録しています(出典:農林水産省「2022年農林水産物・食品の輸出実績(品目別)」)。

 

輸出数量で見ると、1位はアメリカ(9,084㎘)、2位は中国(7,388㎘)、3位は韓国(4,054㎘)、4位香港(2,717㎘)、5位EU(2,712㎘)となっています。このことから、アメリカや韓国では、それぞれ中国や香港に比べ、価格の低い日本酒が多く輸入されていることがわかります。

 

日本酒の輸出増加の背景

なぜ、日本酒の輸出が増加したのでしょうか。その背景を4つご紹介します。

 

和食ブームにより、日本酒が身近になった

2013年に「和食」がユネスコの世界無形文化遺産に指定されたことを受け、世界で日本食ブームが起こりました。日本食レストランが海外で増加し、レストランで日本酒が提供される機会も増えました。さらに、インバウンドの増加で、日本に旅行した際に日本酒の美味しさに目覚め、帰国後にも日本酒を好んで飲む人が増えています。

 

国による支援

新型コロナウィルスの影響による日本酒の需要落ち込みに対する国の支援の一環で、日本酒の国内での消費を拡大するとともに、輸出を促進する取り組みが行われました。国内でも、外国人を対象とした酒蔵ツアーを行うなど、日本を訪れる外国人が日本酒に触れる機会を増やしてきました。加えて、日本政府が2025年までに日本酒の輸出額を600億円に増加させる方針を打ち出したことにより、海外での商談会やプロモーション活動が盛んに行われ、日本酒の海外での認知やブランド価値の向上のための動きが活発になりました。

 

輸出に限定した清酒製造免許の登場

日本酒を輸出するための新たな免許の登場も、輸出増加に一役買いました。それまで酒類を製造するための免許は、免許取得後の1年間の製造見込み数量が酒税法で規定される最低製造数量基準を満たす必要があるなど、満たさねばならない要件が数多くありました。それが令和2年、輸出に限定した清酒(日本酒)の製造免許である「輸出用清酒製造免許」が登場したことにより、輸出用日本酒製造のハードルが下がり、新規参入がしやすくなりました。輸出用清酒製造免許制度の特徴は、最低製造数量基準の適用がなく、需給調整要件も適用外であることです。ただし、輸出用清酒製造免許の保持者が製造する清酒は、海外でのブランディングの確立が目的であるため、原材料の米または米麹は国内産米のみを使用し、国内で製造・容器詰めする必要があります。加えて、海外への輸出品製造のための免許であるため、この免許で製造した商品の日本国内での流通は原則禁止されています。

 

保冷技術の発展

保冷技術の発展により、日本酒にとって最適な状態での輸送がしやすくなりました。これにより、それまで保冷が必要であるために輸出するのが難しかった大吟醸や吟醸、純米酒、生酒なども輸出可能になりました。特に、高価な日本酒の消費拡大に貢献しています。

日本酒を輸出する際の注意点

実際に日本酒を海外に輸出する際、注意すべきことを5つご紹介します。

「輸出酒類卸売業免許」が必要

日本酒を輸出するためには酒類を輸出し、海外の業者に卸売することができる「輸出酒類卸売業免許」を取得する必要があります。所管の税務署に免許申請し、必要な要件を満たしているか審査を受け、合格後に免許1件につき9万円の登録免許税を納付すると、交付されます。

 

輸出酒類卸売業免許は、「清酒の卸売」など輸出する酒類を限定した免許となっているため、限定されたお酒以外を販売する必要がある場合はその都度、条件緩和の申し出を行い、取扱いの範囲を広げる必要があります。

 

一方、酒造メーカーが自社で製造したお酒を輸出したり、もともと酒類卸売業免許を持った酒類卸業者が、免許を受けている酒類を輸出する場合は、輸出酒類卸売業免許が無くても、日本酒を輸出することができます。

 

免税手続きをする

酒類製造者が外国に輸出する目的で、酒類をその製造場から移出する場合や製造者から直接酒類を購入して輸出する場合、酒税が免除されます。そのためには、酒税納税申告書を必ず所定期間内に所管の税務署に提出しなければなりません。その際、酒税納税申告書の期限内での申告であること、酒税納税申告書に数量や税率区分などが記載された明細書を添付する必要があります。

 

輸出先のビジネスパートナー探し

日本から日本酒を輸入する、海外のビジネスパートナーも必要です。海外に出向かなくても、国内で開かれる展示会や商談会、見本市などのイベントに出展して、ビジネスパートナーを見つけることもできます。バイヤーに試飲をしてもらったり、その場で意見をもらうことで、商品の改良点も見つけやすくなります。

 

危険物扱いになる酒類を把握する

航空輸送では、容器あたりの容量が250ℓ以上あり、アルコール度数が24度~70度のお酒、または容器の容量に関わらずアルコール度数70度以上のお酒は、危険物扱いになることがあります。その場合、輸送料が高くなったり提出書類が増えたりと、輸出ができない場合があります。

 

輸出先国で設定されている規制等について調べる

日本酒を輸出するにあたり、輸出先国で設定されている規制等を調べ、事前に把握しておきましょう。例えば中国に輸出する場合、中国には「食品安全法」や「中華人民共和国貨物輸出入管理条例」「輸入酒類国内市場管理弁法」「輸出入食品安全管理弁法」などによる規制が設定されています。ラベルは中国語で強制国家標準に準拠した内容にし、東日本大震災に関する東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた輸出証明書も提出する必要があります。他にも、中国で日本酒を流通させるための税金として、輸入関税、消費税、増値税などがあるため、それらについても把握しておきましょう。

 

このように、輸出先国毎に規制や税制が異なるため、輸出を検討する際は事前に調べ、把握しておくことが大切です。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

日本酒は、日本国内での消費が減っているため、今後も酒造メーカーは販路拡大するために、国外への輸出に注力していく必要があります。それを日本政府も後押ししており、2023年には文化庁が日本酒、焼酎、泡盛等といった日本の「伝統的酒造り」をユネスコの無形文化遺産に提案するなど、引き続き国を挙げて日本酒を海外にアピールしていくようです。これが成功すれば、輸出のさらなる増加も見込めるのではないでしょうか。

 

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FB GLOBAL MEDIA編集部

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最新の海外市場動向からビジネス戦略、現地での法律や規制に至るまで、多岐にわたる情報を発信しています。世界のジャパニーズファンを増やすため、日本の魅力を世界へ発信していきます。