海外進出 2024.03.28

世界に広がる味噌と醤油 輸出増加の背景と輸出の手順について解説

近年、日本の代表的な調味料である味噌や醤油が、世界中に広まっているのをご存知ですか? 味噌は現在60カ国以上、醤油は70カ国以上に輸出され、味噌の輸出量は20年で3倍近くに伸びています。

なぜ味噌や醤油の輸出量は増え続けているのでしょうか。また、味噌や醤油を輸出するにはどういった手続きが必要なのでしょうか。

 

世界に広がる味噌・醤油

和食の広がり

味噌の需要が海外で増加している背景には、まず和食の世界的な広がりがあります。

海外における日本食レストランの数を見ると、2006年には約2.4万店であったのが、2013年には約5.5万店、2017年には約11.8万店、2023年には18.7万店と、著しい勢いで増加しています。それに伴い、日本食レストランで使用する食材として輸入が増加したことが、味噌や醤油の輸出増加の大きな要因です。また、2013年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことでも和食への注目がさらに高まり、味噌や醤油が海外の人たちへと広まっていきました。

 

参考:

和食に対する世界からの注目
海外の日本食レストラン数は18.7万店、2年で2割増(農水省調査)

 

健康食品としての注目

味噌や醤油は単に和食の食材として人気があるだけではありません。健康志向の人たちにとって、とても優れた性質を持った食品です。「発酵食品」「グルテンフリー」(小麦を原材料にした味噌は除く)「ビーガン」といった、近年注目が集まるヘルシーな食品の代表的なキーワードを満たしており、手軽に取れる健康食品としても人気を集めています。

 

参考:有機味噌の輸出可能性

 

輸出の最新情報 

 

味噌・醤油の輸出量の推移

味噌・醤油の近年の輸出量を見ていきましょう。

味噌の輸出は、1990年に約2800トンでしたが、10年後の2000年には倍以上の約5800トン、2010年には約1万トン、そして2023年には約2万トンと急増しています。

 

醤油は1990年に約1000万リットル、2000年には約1050万リットル、2010年には約1770万リットル、そして2017年には約3360万リットル、2023年には4716万リットルと増加してきましたが、現地工場への切り替えが進み、近年輸出は停滞傾向にあります。

 

参考:

JETRO:日本産食材ピックアップ みそ/しょうゆ

醤油の輸出動向 HS210310 3. 輸出量の推移

 

輸出先国

輸出先で見ると、味噌・醤油のどちらとも一位はアメリカで、大きな割合を占めています。第二位が味噌・醤油ともに中国、三位が味噌は韓国、醤油はオーストラリアと続きます。(2022年)

 

参考:2022年農林水産物・食品の輸出実績 (品目別)

 

味噌や醤油の輸出規制

 

輸出にあたり知っておくべきこと

味噌や醤油は加工食品に該当し、輸出するには製造過程や衛生面で国際基準を満たし、添加物や残留農薬・ラベルなどが輸出先の規制に従っている必要があります。特に、肉や魚、野菜など味噌の主原料以外の食品が含まれた味噌や醤油については、規制項目が異なるため注意が必要です。

関税や付加価値税(VAT)についても国によって異なるので、輸出先を決めるにあたって把握しておかなければなりません。

 

参考:

フランスへの味噌輸出実行マニュアル 

 

変化する各国の規制の例

2023年9月、EU諸国へのだし入り味噌輸出に対する規制が緩和され、従来必要であった書類が免除されました。それによって今後だし入り味噌のEU諸国への輸出が促進されることが予想されます。

 

参考:

欧州委、だし入りみそなどの通関手続きを簡略化(日本、EU) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

 

一方で、同年、福島第一原発の処理水の放出を受けて、中国が日本からの海産物の輸出を全面的に中止した影響で、昆布や鰹などのだし成分を含む味噌の輸出が禁止されました。

参考:

中国輸入停止 みそ・しゅうゆなど輸出自粛の動きも 道調査|NHK 北海道のニュース

 

このように輸出にあたっての手続きや基準は各国で異なるだけでなく、同じ国でも状況により変化することがあるので、最新の情報を得ておくことが重要です。

味噌・醤油輸出の今後のポテンシャル

 

味噌・醤油の国内消費落ち込みから、輸出へ

国内でも健康食品や発酵食品に注目が集まってるとはいえ、人口減少や食生活の変化から、味噌や醤油の国内消費は縮小しています。一方和食の世界的な広がりから、味噌は引き続き輸出増加が予想されます。味噌の最大の輸出先国であるアメリカは近年、輸出量は横ばいですが、中国・台湾など東アジアや欧州の国々では輸出額が増えており、今後も輸出増加が期待されそうです。

参考:

有機味噌輸出の可能性

一世帯あたりの醤油の消費量

 

対欧米・東アジアキーワード「有機」「グルテンフリー」「発酵食品」

アジアで減塩味噌が人気であることからも分かるように、味噌や醤油の健康的な側面に注目が集まっていますが、欧米ではさらに「有機」「グルテンフリー」「発酵食品」であることに着目する健康志向の人々からの支持が厚いようです。特に個人消費の味噌や醤油は有機原材料であったり、小麦不使用といった、付加価値のある味噌の輸出が増えています。

 

参考:

有機味噌輸出の可能性

 

「ハラール」味噌製造などで、より輸出先の拡大

現在世界におよそ20億人と言われるイスラム教徒。そんなイスラム教徒がイスラム法によって食べることが許可されている食べ物をハラール食品と言います。

参考:Halal tourism development to be shaped by under-40s | TTG Asia

 

一般的に味噌は、だしや品質保持のためのアルコールが添加されていなければハラール食品と言えます。ハラール認証を受けることで、イスラム教徒の多い国への輸出の際、さらに信頼感が増すでしょう。

 

さらなる海外消費・輸出拡大に向けて

まずは、信頼できる輸出先のパートナーを見つけることが大切です。そのためには見本市や催事に参加するのが近道ですが、必ずしも海外に出向く必要はありません。国内でも展示会や見本市は開催されており、近年はオンラインでの開催もあります。

 

参考:

世界の見本市データベース(J-messe) – ジェトロ

 

そして、現在は海外の日本食レストランを対象とした業務用の輸出がメインですが、個人の消費も促すには、メディアや店頭販売などで使い方を広めていくことが有効です。

まとめ

 

以上、味噌や醤油の輸出について述べて参りました。国内消費が落ち込む一方で、引き続き海外からの注目は高まっており、特に味噌に関して、輸出は引き続き追い風と言えるでしょう。

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FB GLOBAL MEDIA編集部

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