海外進出 2024.03.27

アメリカへの輸出ビジネスについて徹底解説

2023年は円安の進行や、コロナ禍からの回復により、アメリカへの輸出に追い風が吹いています。

 

本記事では、対アメリカ輸出について詳しく解説します。

 

アメリカの貿易と経済状況

2023年3月23日にアメリカ商務省が発表した「2022年の貿易統計」によると、輸出は前年比17.8%増の3兆119億ドル、輸入は16.3%増の3兆9,572億ドルと、輸出入ともに増加しています。輸出の増加は、新型コロナ禍からの経済回復を背景に、輸出先や地域の拡大、輸出品目の多様化が進んだことが主な要因です。特に、中国以外のアジア地域への輸出が拡大しており、東アジア、東南アジア、インドなどへの輸出額は前年比でいずれも20%以上増加しています。輸出品目については、医療機器や半導体など、高付加価値製品の比率が高まっています。一方、輸入は原油や天然ガスなどのエネルギー価格の上昇や、自動車や家電製品などの消費財の需要増加が主な要因です。特に、エネルギー価格の上昇は、アメリカの貿易赤字拡大に大きな影響を与えました。

 

2023年のアメリカ経済は、新型コロナウイルス感染症の再拡大や、ロシアによるウクライナ侵略に起因したエネルギー価格や食料価格の上昇により、個人消費の伸びが鈍化し、成長率も鈍化しています。物価の上昇は、家計の購買意欲の減退だけでなく、企業の投資意欲の抑制などにつながる可能性があります。

 

日本の対米輸出

日本からアメリカへの輸出額は、2022年は前年比9.8%増の1,481億ドルとなりました(出典:2023年、アメリカ商務省「2022年の貿易統計」)。自動車や自動車部品、電子機器、機械などの輸出が好調に推移したことが主な要因です。特に、自動車の輸出は、アメリカの自動車メーカーの工場稼働率の回復や、アメリカ国内の自動車需要の拡大を背景に、増加しています。今後の日本からアメリカへの輸出については、日米経済連携協定(EPA)の締結や、アメリカの企業による日本への投資拡大などの動きから、今後も引き続き拡大が見込まれます。

 

アメリカ輸出の基礎知識

アメリカ輸出を目指す企業にとって、アメリカへの輸出の基礎知識は不可欠です。本章では、輸出のプロセスやアメリカの輸入規制、アメリカに輸出する際に必要な書類、関税、ビザや滞在許可の準備、アメリカ市場で成功するための商品選定のポイントについて説明します。

 

輸出のプロセス

まずは、市場調査と製品準備を行い、アメリカでの需要を理解し、適合する商品を準備します。次に、輸出ライセンスを取得し、関税や規制について調べます。その後、信頼できる物流パートナーを選定し、輸送方法を決定します。書類は細心の注意を払い、正確に準備することが重要です。最終的には、税関での申告を行い、商品が無事に出荷されることを確認します。

 

アメリカの輸入規制

アメリカへ輸出を検討する際は、アメリカの輸入規制について事前に確認しておく必要があります。本章では、主なアメリカの輸入規制をご紹介します。

 

輸入禁止・制限品目

税関・国境警備局(CBP)は、他の政府機関からの委託を受け、輸入禁止、制限の管理を行っています。品目によって、制限が課せられたり、一定の基準を満たすことが求められたりします。

 

輸入数量割当制(クオータ制)

輸入数量割当制(クオータ制)とは、一定期間内に輸入される品目の数量を制限する制度です。数量が制限される場合(Absolute Quota)と、一定の数量に対し関税の割引が適用されるものの、この数量を超える分に関しては通常の税率が適用される場合(Tariff-rate Quota)があります。前者の対象品目は鉄鋼・アルミニウム製品と繊維製品、後者の対象品目はオリーブやミカン、マグロなどです。

 

輸入にあたり許可が必要な品目

食品(乳製品、食肉など)やアルコール飲料、タバコ製品、銃器、放射性物質、生物学的薬剤、野生動物など、対象品目についてはアメリカに輸入する際に許可を得る必要があります。

 

個人によるアメリカへの持ち込みが規制される品目

タバコや医薬品、食品などを個人がアメリカに持ち帰る、あるいは個人的に取り寄せようとする際、個人消費が目的であっても規制される場合があります。

 

輸入地域規制

キューバやイラン、北朝鮮など、外国資産管理規制やキューバ資産管理規則等によって、全面的または部分的に輸出入禁止措置がとられている国があります。

 

他にも、輸入品には原産地を確認しやすいところに英語で表示するよう義務付けられている「原産地証明」や、テロ関連の輸入規制があります。各規制の詳細を確認したい方は、コチラをご覧ください。

 

輸出する際に必要な書類

輸出時の手続きは複雑で、正確な必要書類の提出が求められます。アメリカの場合、エントリーマニフェストや商業インボイス、パッキング・リスト、検査証明、原産地証明などを準備する必要があります。これに加え、製品によっては特別な許可証や認証が必要になったり、電子輸出情報をアメリカ国勢調査局に提出することが義務付けられているケースもあります。輸出時の手続きをスムーズに進めるためにも、これらの書類は事前に準備しておきましょう。最新の規制や手続きは変更されることがあるため、常に最新情報を確認するようにしましょう。

 

関税

輸出品の関税計算は複雑です。アメリカの関税は、アメリカ関税率表によって定められている「一般関税」と、特恵措置が適用される国や輸入品へにかけられる「特別税率」、キューバと北朝鮮に対して適用される「法定税率」の3種類あります。どの関税がかかるかは、「World Tariff」「RULES OF ORIGIN FACILITATOR」「HTSコードの検索サイト」で調べることができます。

 

ビザや滞在許可の準備

アメリカ輸出においては、ビザや滞在許可の取得が重要です。輸出業者は「商用ビザ(B-1)」を申請し、必要書類を準備する必要があります。これにはパスポート、輸出計画書、ビジネス関連書類が含まれます。オンラインでの「DS-160フォーム」の記入、面接予約、領事館での面接を経てビザが発行されます。滞在許可は、「I-94フォーム」によって入国時に管理され、ビザの種類や目的に応じた滞在期間が許可されます。取引の信用にも大きく関わるため適切な手続きが求められます。

 

アメリカ市場で成功するための商品選定ポイント

アメリカ輸出成功の鍵は、緻密な市場分析に基づく商品選定にあります。アメリカ市場は多様性に富んでおり、トレンドに敏感な消費者が多いため、現地のニーズを把握することが不可欠です。地域ごとの文化的差異を理解し、商品をカスタマイズしたり、持続可能性やイノベーション性を重視した商品を選定するのもいいでしょう。中には、アメリカ市場において価格競争が激しい商品もあります。なるべく価格競争が激しくない商品を選ぶことで、利益を上げやすくなります。

 

サポート

本章では、日本政府による輸出支援や、アメリカ市場進出に役立つビジネスサポート機関について説明します。

日本政府による輸出支援

アメリカ市場へのビジネス拡大を目指す企業にとって、日本政府による輸出支援は大きな後押しとなります。例えば、2022年にスタートした「新規輸出1万者支援プログラム」では、経済産業省や中小企業庁、JETRO、中小機構が一体となり、全国の商工会・商工会議所等とも協力しながら、新たに輸出に挑戦する事業者の掘り起こし、専門家による事前の輸出相談、輸出用の商品開発や売込みにかかる費用への補助、輸出商社とのマッチングやECサイト出展への支援等を一気通貫で実施しています。また、農林水産省が推進する日本の農林水産物・食品の輸出プロジェクト「Global Farmers / Fishermen / Foresters / Food Manufacturers / Project(GFP)」では、輸出のための産地づくり計画策定支援や、規制情報等の輸出に関連する情報の提供、輸出ノウハウの提供を行っています。他にも、外務省が日本企業の海外展開支援をするために、ほぼ全ての大使館・総領事館などに「日本企業支援窓口」を設置したりしています。

 

アメリカ市場進出に役立つビジネスサポート機関

アメリカ市場進出に際し、多くの企業が利用するビジネスサポート機関が重要な役割を果たています。アメリカ商務省の国際貿易局やアメリカ商工会議所が提供するサポートサービスは、市場調査、法規制の把握、ビジネスマッチングなど多岐にわたります。Small Business Administration (SBA)は、特に中小企業の市場進出を支援するプログラムを提供しており、資金調達から輸出戦略の策定まで、具体的な支援を受けることが可能です。これらの機関を活用することで、アメリカ市場へのスムーズな進出が期待できます。

 

まとめ

2023年以降、日本の対米輸出は、新型コロナウイルス禍からの経済回復、円安などを背景に追い風を受け好調の兆しです。このビジネスチャンスを生かし、アメリカ市場に進出するには、アメリカの輸入規制や関税、輸出する際に必要な書類などについて把握しておく必要があります。さらに、日本政府やアメリカ政府が行っている支援制度を活用することで、スムーズに輸出することができます。です輸出に関して疑問や不安がある場合は、専門家の手を借りることを検討することをおすすめします。

 

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FB GLOBAL MEDIA編集部

FB GLOBAL MEDIA編集部

最新の海外市場動向からビジネス戦略、現地での法律や規制に至るまで、多岐にわたる情報を発信しています。世界のジャパニーズファンを増やすため、日本の魅力を世界へ発信していきます。