【徹底解説】ベトナムへの輸出ビジネスのメリットと必要な手続きとは?
近年、ベトナムは中国に代わる生産・輸出拠点として大きな注目を浴びています。
日本からの近さや人口増加による市場規模拡大に伴い、日本からベトナムに製品を輸出する企業は増加傾向にあります。
しかし、「日本からベトナムに進出したいけれど、方法がわからない」というお悩みを持つ方々もいらっしゃることでしょう。
そこで本記事では、ベトナム進出を考えている経営者さまに向け、ベトナム進出のメリット、ベトナムに輸出する流れ、輸出に必要な手続き、注意すべき規制について解説します。
ベトナムの急成長に注目し、ビジネスをスタートさせたいと考えている事業者の方々はぜひご一読ください。
輸出の前に ベトナムとはどのような国?
国名 ベトナム社会主義共和国
人口 約9,946万人
面積 32万9,241平方キロメートル
首都 ハノイ
言語 ベトナム語
参考元:ベトナム基礎データ|外務省
ベトナムは、北は中国、西はラオス・カンボジアと国境を接し、南北に細長い国です。南部地域は熱帯性気候で雨季と乾季がある一方、北部地域は四季があり、気候に大きく違いがあります。気候にともない国民の気質にも違いがあり、北部エリアは、忍耐強く、勤勉な人たちが多いといわれています。一方で南部地域は、おおらかな気質の人が多い傾向です。
ベトナムには、フランス領時代の趣が残った建築物も多数あり、観光地としても人気があります。また、華僑が多かった理由から、漢字の看板を見かけることがあり、中国語から派生した言葉も多くあります。
ベトナムは社会主義国なのですが、1986年にドイモイ政策を採用し、中国経済と同様に市場経済を導入しています。中国などから一次産品を輸入し、工業品に加工した後、米国に輸出する「三角貿易」で発展してきた国です。
ベトナムと日本の貿易関係
日本とベトナムの貿易関係はかなり活発であり、相互に重要なパートナーです。経済連携協定(EPA)を締結し、貿易関係を一層強化しています。
具体的な輸出品目は、
1位:コンピュータ電子製品・同部品
2位:電話機・部品
3位:機械設備・部品
となります(2021年に日越間の貿易額が初の400億ドル台に(ベトナム) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース)。
農林水産物や食品も日本から多数輸出されており、ベトナムは日本の農林水産物・食品の輸出先第6位となっています(2023年1ー12⽉ 農林⽔産物・⾷品の輸出額)。日本からの農林水産物や食品は、品質の高さや安全性が高く評価されており、その需要は着実に増加しています。
2022年の主な輸出品目は以下の通りです。
1位:粉乳
2位:さば(生鮮・冷蔵・冷凍)
3位:清涼飲料水
4位:植木等
5位:さけ・ます(生鮮・冷蔵・冷凍)
特に水産物の輸出が顕著で、さばや鮭、ますなどが主力となっています。これらの海産物はベトナムの食文化にも適していることや、ベトナムで日本食レストラン数が2015年から2022年までに3倍以上に増加しているように、国内で日本食に触れる機会が増加していることから、高い需要が見込まれます。また、近年では粉ミルクや乳製品の需要が拡大しており、牛乳や乳製品も重要な輸出品目として伸びています。
ベトナム輸出ビジネスのメリット
ベトナムは、近年急速に発展を遂げている新興国であり、人口も増加傾向にあります。そのため、市場規模も急速に拡大し、様々な製品・サービスに対しての需要が高まりつつあります。
同時に日本企業にとっても、新たなビジネスチャンスが拡大し、新規市場進出の絶好のタイミングと考えることができます。
我々日本の企業にとって、ベトナムへの進出が魅力的だといえる理由は4つあります。
まず、ベトナムは日本とタイムゾーンが近いこともあり、ビジネスを行ううえでハードルが低いことです。より効率的なコミュニケーションを実現することができ、さらなるビジネス拡大と成長を期待できます。
2つ目に、ベトナムには豊富な労働力があり、かつ、賃金水準も比較的低いという特徴があります。そのため、日本がビジネスを行ううえで、生産コスト軽減を実現でき、競争力を維持しながら、輸出による利益を最大限に引き出すことができます。
3つ目に、ベトナムは日本との関係が歴史的に見ても良好な国であり、すでに多数の日本企業が進出を果たしていることから、ビジネス環境も整っています。よって、これからベトナムの輸出ビジネスを検討している事業者の方々にとっても、安心してビジネス展開できる国であるといえます。
最後に、ベトナムはASEAN諸国の中心に位置し、近隣諸国との物流ビジネスが行いやすいという地理的なメリットも挙げられます。そのため、ベトナムにビジネス進出すれば、ベトナムを拠点として、アジアエリア全体のビジネスを効率的に行うことができます。
ベトナムへの輸出の流れ
ここでは、ベトナムへ輸出をする際の流れを解説します。
・売買契約を結ぶ
・貨物の輸送・通関
・料金の支払い
売買契約を結ぶ
まずは、ベトナムに限らず輸出業を行う場合にしなければならないのは、売買契約の締結です。
売買契約で大事なポイントは、
・どのようなモノを輸出するのか
・誰と取引を行うのか
・いつ出荷するのか
・どの程度の量を取引するのか
・いくらで取引を行うのか
です。
交渉内容で合意が成立すれば、契約書の作成です。国際契約においては一般的に英文契約書が使われています。契約書は2枚作成し、お互いがサインをした上でそれぞれ1部ずつ保管します。
それぞれの国で使われている通貨が違う場合には、商品代金の決済において、どちらかの国の通貨を使うか、あるいは第三国の通貨を使うか取り決めも必要です。
決済方法には、「電信送金決済」と「荷為替手形決済」があります。
貨物の輸送・通関
次は、ベトナムへ輸送する手配です。
国内輸送より長い時間がかかってしまう国際取引だからこそ、貿易条件(インコタームズ)もしっかり決めておく必要があります。インコタームズがあることによって、様々異種の国の企業と共通項の認識をもち、取引を行うことができるようになります。CIF(運賃保険料込み)条件であったり、C&F(運賃込み)条件であれば、日本にいる輸出者の側が、ベトナムへ輸出する手配をします。
料金の支払い
貿易で発生する料金の支払いは、それぞれ契約条件によって様々です。
全額前払いで支払いすることもあれば、半分だけ前払いをして、残りは貨物を受け取ったときに支払いするケースもあります。
また、荷為替手形を利用して決済する場合もあります。
ベトナムへの輸出で必要となる書類
ここでは、ベトナムへの輸出通関で必要となる書類について解説します。
輸出申告書
輸出の手続きでは、「輸出申告書」が必要となります。輸出申告書は、輸出する貨物に関しての大事な情報を税関に正式に申告するための公式文書です。
輸出申告書には、船積み依頼書であったり、インボイス、商品価格や数量などといった基本情報が書かれたパッキングリストの情報を盛り込む必要があります。
商品の詳細な説明、数量、値段などの情報を含め、輸出国と輸入国、送り側と受け取り手側の情報も記載されます。
インボイス
「インボイス」は、どのようなモノをいくらで販売するか取引内容を示すための書類です。
記載するべき情報は、
・貨物の品名
・種類
・数量
・価格
・代金支払方法
・荷送人・荷受人の住所居所、氏名、名称
などです。
パッキングリスト
「パッキングリスト」は、貨物をどのように積み込んでいるのかを示すための書類です。
パッキングリストには、
・輸出する貨物の個数
・包装後の重量・容積
……などが記載されます。
船積依頼書(シッピングインストラクション)
「船積依頼書(シッピングインストラクション)」とは、フォワーダーなど通関業者を経由し、船会社や航空会社、航空貨物代理店にそれぞれ発行してもらう「船荷証券(Bill of Lading: B/L)」「航空運送状(Air Waybill: AWB)」を作成するための情報を示す書類です。
委任状
「委任状」とは、通関業者と初めて取引を行う際に必要となる書類です。
通関業者では、通関業務に関して、委任状を一定期間保存することが義務付けられています。
ベトナムへの輸出で注意しなければならない規制とは
日本から貨物を輸出しようと思えば、「外国為替及び外国貿易法」のルールに従う必要があります。いわゆる「外為法」では、国際間においての、平和の維持を最大の目的としているため、武器輸出に対しての厳しい制限を設けています。
また、貨物だけでなく、情報であったり、技術が提供されることも規制の対象となります。
スムーズに取引が行われるためにも、輸出側があらかじめどのような貨物が輸出規制対象であるかを正しく理解しておく必要があります。そして、輸出側は、規制対象に該当していないことを自身で証明する必要があります。
たとえば、輸出するモノが、自社で製造したものではなく、他社の商品ということもあるでしょう。そのような場合でも、その製造メーカーに対して、非該当判定書の作成を依頼する必要があります。
そして、規制対象のモノであれば、輸出側が、経済産業大臣より輸出の許可を得る必要があります。
リスト規制
「リスト規制」とは、輸出に関して許可が必要となるモノや技術をリストアップしたものです。概ね以下のように分類されています。該当するモノを輸出しようと思えば、経済産業大臣の許可が必要です。
リストアップされている項目は、
・武器
・コンピューター
・原子力
・通信関連
・化学兵器
・センサー・レーザー
・生物兵器
・ミサイル
・航法関連
・海洋関連
・エレクトロニクス
……などです。
それぞれの項目には、さらに細分化された項目が設定されています。
経済産業省の安全保障貿易管理ホームページ(安全保障貿易管理について)で確認することができますので、必ず最新の情報を確認するようにしてください。
また、海外にある自社工場であったり、日系企業に対して輸出しようとする場合においても許可が必要です。それほど規制は厳格であると考えることができます。
キャッチオール規制
「キャッチオール規制」とは、リスト規制品に該当しない貨物の輸出であったり、技術提供に対して、用途や需要者の内容に従い、大量破壊兵器や通常兵器の開発などに使用される恐れがある場合に受ける規制です。
そのため、リスト規制に該当していなかったとしても、安心するのはまだ早いのです。
キャッチオール規制は、「大量破壊兵器キャッチオール」と「通常兵器キャッチオール」の2種から構成され、「客観要件」と「インフォーム要件」 の2種の要件によって規制を受けます。
リスト規制に該当しない非該当品について、さらに、キャッチオール規制の確認を行います。また、キャッチオール規制の対象から外れる国々もあります。それは、いわゆるホワイト国です。ホワイト国は、国際的な枠組みの中で輸出管理が厳格にされている国とみなされ、リスト規制の対象国ではあるのですが、キャッチオール規制対象からは免れています。
ホワイト国(グループA)は、アルゼンチン、オーストラリア、西欧各国、アメリカ……などといった輸出管理優遇措置対象国です。
また、グループ Bは、南アフリカ、韓国、トルコなど、国際輸出管理レジームに参加して、一定要件を満たす国々です。
グループ Dは、国連武器禁輸国、懸念国とみなされている国々です。アフガニスタン、イラク、リビア、北朝鮮などの国が該当します。
そして、グループ Cは、A、B、Dのどこにも該当しない国々です。ベトナムは具体的に記載されている訳ではありませんが、ここに該当すると考えられています。
ベトナムへの輸出入の関税は?
ベトナムへの輸出は、ベトナム側の輸入関税が発生します。支払いをしなければならないのは、基本的に輸入側です。
ベトナムの関税のメカニズムは、基本的に日本と同じように、商品の品目と、原産地との組み合わせで関税率が決定されます。
関税がかかる対象はCIF価格(Cost Insurance and Freight=運賃保険料込み条件)で、「商品代金」+「保険料」+「輸入港までの運賃」で計算されます。
ベトナムの関税には、3種(「標準関税率」、「優遇関税率」、「特別優遇関税率」)の異なる税率が採用されています。
日本からの輸出品に対しては、原則として、優遇関税率(MFN)が適用されています。しかし、EPA(経済連携協定)の条件を充たす場合においては、特別優遇関税率が適用されます。
*EPA(経済連携協定)について
ベトナムと日本との関係には、「日越経済連携協定(JVEPA)」、「日本・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)」、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定、CPTTP)」の経済連携協定が締結されています。
適用される経済連携協定によって税率は違い、事業者は輸出品目の税率が低いEPAを選ぶことができます。
原産国を判定するルールも違うため、EPAごと原産地規則の確認が必要です。
経済連携協定の適用を受けるためには、「原産地証明書」が必要となります。JVEPA・AJCEPとTPP11協定それぞれ手続きが違います。
事業者は、適用となるEPAをあらかじめ確認し、書類を準備します。
関税率の確認方法
ベトナムの関税率は、以下のような方法で確認することができます。
まず、輸出する貨物の「HSコード」の最初の6桁を確認します。
「World Tariff」は、オンラインで利用することができる関税データベースです。日本居住の場合、JETROページ(世界各国の関税率(WorldTariff) | 輸出 – 目的別に見る – ジェトロ)から無料で登録可能です。
「World Tariff」に輸出先を入力、該当するHSコードを選ぶと、税率が表示されます。
輸出の支援ならFBマネジメントへお任せ
海外への輸入ビジネスを行ううえで、専門用語も登場し、初めての方は、かなりハードルが高いと感じてしまうかもしれません。
確かに、最初はじっくりと時間をかけて学ぶ意識も当然必要です。
しかし、ビジネスにはタイミングもあるため、早急にベトナム輸出ビジネスを行いたいと考えるのであれば、ぜひ、輸出の支援のプロであるFBマネジメントにお任せください。
FBマネジメントは意欲ある地方企業の経営支援に特化したコンサルティング会社です。
東京やアジアの最新情報やネットワークを活かし、地方経営者に創造性と革新性をもたらします。
FB GLOBAL MEDIA編集部
最新の海外市場動向からビジネス戦略、現地での法律や規制に至るまで、多岐にわたる情報を発信しています。世界のジャパニーズファンを増やすため、日本の魅力を世界へ発信していきます。