海外進出 2024.03.28

日本ワイン、世界への挑戦:市場拡大の可能性

日本ワインは世界でも高品質として知られています。

今回は日本ワインの特徴を理解し、今後の日本ワインの輸出量増加に向けた展望をお話させていただきます。

 

日本ワイン産業の現状

歴史

日本ワイン造りの歴史は比較的新しいです。約140年前の明治時代、日本ワイン造りはぶどう栽培が盛んに行われていた山梨県から始まります。その中で、2人の若者がフランスでワイン造りを学び、帰国後に国内初のワイン会社を設立しました。これが日本ワイン産業の始まりです(出典:日本ワイナリー協会)。明治12年には甲州ぶどうから作られたワインが完成し、国内における地域産業としての一歩を踏み出しました。大正時代には日本各地でぶどう畑やワイナリーが増え、特に山梨県、長野県、北海道、山形県が有名なワイン産地として知られるようになりました。中でも山梨県は日本ワインの発祥地であり、日本一のワイン生産県として長い間先駆的な役割を果たしてきました。近年では、大阪府や熊本県などでもぶどう栽培が盛んになり、日本ワイン産業の裾野が広がっています(出典:山梨県・重点施策)。

消費量

日本においてテーブルワインの消費が注目されるようになったのは、昭和39年(1964年)の東京オリンピックの頃からです。その後、いくつかのワイン・ブームを経て、日本ワイン消費は急激に伸び、その後は少しずつですが着実に消費を伸ばしています。

 

ここで過去に起こった主なワインブームを振り返ってみましょう。

 

第1次ワインブーム (1972年):本格テーブルワイン市場の開始

第2次ワインブーム (1978年):1000円以下のワインの普及

第3次ワインブーム (1981年):地ワインの注目

第4次ワインブーム (1987~90年):ヌーヴォー(新酒)と高級ワインの人気

第5次ワインブーム (1994年):手頃な価格のワインの需要増

第6次ワインブーム (1997~98年):赤ワインの人気増加

第7次ワインブーム(2012~):手頃な価格の輸入ワインの需要増

 

国内におけるワインの消費量は着実に伸びてはいますが、酒類市場全体を見ると、ワインの販売数量はまだまだ低い水準であり、シェアは4.4%(平成30年度)となっています。(出典:日本ワイナリー協会)。

 

日本ワインの世界的評価

日本ワインは独自の品質と味わいを持ち、世界的な評価を受けており、国際的なコンクールでも日本ワインの受賞数が増えています。1989年には、メルシャンのフラッグシップワインである「桔梗が原メルロー1985」がリュブリアーナコンクールで大金賞を受賞し、桔梗が原はメルローの銘醸地として名高くなりました。さらに2014年には、「デカンター・ワールド・ワイン・アワード」で中央葡萄酒が造る甲州ワインが日本ワイン初の金賞&地域最高賞を受賞し、その後も金賞やプラチナ賞を獲得し、日本ワインの実力を示しました。最近では、余市ドメーヌ・タカヒコのワインが世界のレストランNo.1に輝いたデンマークの「NOMA」に選ばれるなど、世界における日本ワインの注目度が高まっています。(出典:ワインスクール アカデミー・デュ・ヴァン)。

 

また、北海道仁木町のNIKI Hillsワイナリーが手掛けた赤ワイン『YUHZOME 2018』が、世界最大の国際ワインコンテスト「Decanter World Wine Awards 2020」で金賞を受賞しました。これは日本初の赤ワイン金賞受賞であり、日本ワインの世界における地位の向上に貢献しました。(出典:株式会社NIKI Hillsヴィレッジ)。

 

これらの受賞などにより、日本ワインは世界的な認知度も高まり、世界のワイン図鑑でも2ページを割いて掲載されるほどになっています。さらに、世界的なワインジャーナリストも日本を訪れ、その魅力を高く評価するに至っています。

 

日本ワイン輸出の歴史

第1次ワインブームの1970年代以降、日本ワイン産業は急速に成長し、国内市場での需要が拡大したことから、輸出市場への関心が高まりました。最初の輸出先は、主にアジア地域の近隣諸国や欧州諸国でした。当時の輸出ワインは、主に日本の大手ワイナリーが生産する一般的な種類でしたが、これらのワインは国際市場での競争力に欠けるという課題がありました。

 

しかし、近年では、日本ワイン産業は品質の向上と多様化に取り組んでおり、それに伴い海外での需要も増加しており、海外への日本ワインの輸出量は増加しています。この傾向から、今後さらなる成長が期待されます。(出典:株式会社流通研究所)。

 

主要な輸出先国と市場の特徴

日本ワインの主な輸出先国は、アジア地域となります。2018年のデータでは、金額別の輸出相手先として、1位は1億300万円の香港、2位が8500万円の台湾、3位が2600万円の中国、4位が1800万円のシンガポール、5位が800万円の韓国となっています。これらの国々では経済成長に伴いワイン文化が発展し、日本ワインも受け入れられるようになりました(出典:ニホンワインノミクス)。

 

特に香港はアジアのワインマーケットの中心地であり、アジア最大級のワインコンクールも開催されています。高価格帯ですが、同時に品質も高い日本ワインが香港で受け入れられていることがうかがえます。

 

一方、欧州市場では2020年のデータで、1位が600万円でイギリス、2位が320万円でフランスとなっています。アジア圏と比較すると、輸出額が少ない傾向にあります(出典:海外流通実態調査)。

日本ワインの輸出方法

ワインを輸出する際の手続きは、輸出先の国によって異なります。輸出額の最も大きい香港を例に挙げて見ていきましょう。

 

①輸入許可、輸入ライセンス、商品登録等(輸入者側で必要な手続き)に関して

・物品税は免税扱いで、輸入に際し、商品の輸入・保管・移動のためのライセンスや許可取得の必要はありません。

・アルコール度数30%を超える酒類を含む物品税課税品目を輸出する者は、輸入ライセンスの取得が必要です。

・同酒類を含む物品税課税品目の保管を行う場所を設けるにあたって、倉庫ライセンス(Warehouse License)の取得が必要となります。

・輸入ライセンスおよび倉庫ライセンスは香港税関に申請します。

・申請者が法人の場合、法人の責任者は香港居住者(IDカード保有者)が推奨され、商業登記証や賃貸契約書などの提示も求められます。

・商品登録は必要ありません。

 

②輸入通関手続き(通関に必要な書類)に関して

・輸入ライセンスの取得後、同酒類の輸入の度に、税関に保税倉庫からの移動許可(Removal Permit)を申請し、通常の輸入通関手続きを行います。

・通関に伴う提出書類は次のとおりです。

 ⅰ) 輸入陳述書(Import Statement)

 ⅱ) 積荷目録(マニフェスト)

 ⅲ) エアウェイビル(航空貨物運送状)、オーシャンB/L(船荷証券)、またはほかの同様の書類

 ⅳ) インボイスおよびパッキングリスト

 ⅴ) 引渡し指図書(リリースレター)または貨物保管通知

 ⅵ) 輸出元国の発行機関が発行する衛生証明書(アルコール飲料の場合は、特定の輸出証明書の提出義務はなく推奨対象)

 

③輸入時の検査・検疫に関して

・香港では、「公衆衛生および市政条例第132章第59条」(Cap.132 Section59 The Public Health And Municipal Services Ordinance)に基づき、香港食物環境衛生署(FEHD)が輸入食品を検査する権限を有しています。

・輸入時における通関では、積荷目録(マニフェスト)などの書類の検査、および必要に応じて輸入される商品のサンプル検査が行われます。

 

④販売許可手続きに関して

・アルコール飲料の販売については、販売された場所で消費しない場合には規制はありません。

・アルコール飲料を販売し、かつその場で消費する場合(飲食業の店舗内で酒類を提供する場合)は、酒類免許委員会(Liquor Licensing Board)が発行するLiquor License(一般的なレストラン、ファストフード店の場合)、またはClub Liquor License(バーやクラブの場合)の取得が必要となります。

・特別行政区長官から任命された酒類免許委員会(Liquor Licensing Board)がライセンスの発給を行い、香港食物環境衛生署(FEHD)がライセンスの管理を行っています。

 

台湾など他の輸出先の国でも、同様の手続きが必要ですが、それぞれの国の法律や規制に従った手続きを遵守する必要があります。(出典:JETRO)。

 

日本ワイン輸出に関する成功事例とビジネスチャンス

成功事例

輸出に成功している例として、中央葡萄酒のワインが挙げられます。中央葡萄酒のワインは、2014年と2015年の2年連続で国際ワインコンクールの金賞を受賞したことにより、「日本ワイン」の実力を世界に示し、海外への販売を大幅に増やし、現在では世界19ヵ国にワインを輸出するに至っています(出典:プロジェクトニッポン 山梨県)。

ビジネスチャンス

日本ワイン輸出には、さらなるビジネスチャンスがあります。そのためには、品質のさらなる向上とブランディングの強化が不可欠です。国際的に評価される高品質なワインの製造や、ワインブランドの確立によって、国外での需要を拡大することが望まれます。また、国地域の特色や文化に基づいたマーケティング戦略も重要です。日本の自然や歴史、食文化と結びついたワインブランドやワイナリーを通じて、日本の魅力を世界に発信することが求められています。

 

また、新たな輸出市場の開拓や販売チャネルの拡大も大きなビジネスチャンスとなります。特にアジア地域や新興市場への進出が注目されており、日本ワイン産業はこれらの市場における需要の拡大が見込まれています。

 

日本ワイン輸出における課題

しかし、日本ワインの輸出にはいくつかの課題もあります。まず、国際競争力の強化が挙げられます。世界のワイン市場では、フランスなどの伝統的なワイン生産国や新興のワイン生産国との競争が激しく、日本ワインはその中で差別化を図る必要があります。品質や価格競争力、ブランド力のより一層の強化が求められます。

 

次に、輸出市場への販路拡大です。日本ワインは主にアジア地域や欧米などに輸出されていますが、他のワイン生産国と同様に、新たな市場への参入や拡販が課題となっています。貿易障壁や規制、輸入制限などの問題が存在し、これらを乗り越えるためには政府の支援や外交交渉の強化が必要です。

 

これらの課題を克服することで、日本ワイン産業の輸出がさらに発展していく可能性があります。適切なアプローチを輸出先市場に対して行うことで、日本ワインの輸出を成功に導くことができます。

日本ワイン輸出の展望

以上、日本ワインの輸出について述べて参りました。日本ワインの輸出は着実に成長を続けており、国際的な評価も高まっています。高品質なワインの生産やブランディングの強化、新たな販売チャネルの開拓など、様々な取り組みが今後の輸出量の拡大に大きく寄与しています。国際的な競争力をさらに高めることで日本ワインの輸出は今後も成長が期待されます。FBマネジメントは、意欲ある地方企業の経営支援に特化したコンサルティング会社です。

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FB GLOBAL MEDIA編集部

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